大きな木の下で

伊勢神宮内宮の境内には、たくさんの木がありますが、私たちにとって特別大切な木が在ります。

我が息子が2歳の時です。
参拝を終えその木の下をとおりかかると、
息子が小さな体をそらして木を見上げ、
キャッキャ喜びアウアウとお話ししはじめました。
何かいるのかと思って見ても、悠々と葉が茂るだけです。
気に入ってしまったのか、うながしてもまるで動かず、
時間もあるので息子の気がすむまで、その木の下におりました。

その太い幹は天にまっすぐに伸び、根元はがっしりと苔むし、
ゆったりとした枝を広げ、心地よい木陰を作ってくれていました。

私たちもいつもの間にか、かしこまりながらも心地よい、ゆったりとした時間を過ごしていました。


そんな息子も9歳。
今回の伊勢詣ででも、この木に会えるのがたのしみでした。

その木は確かにそこにいましたが、
苔むしていた幹はツルツル…というか黒光り…
たくさんの人が触れるのでしょう。
息子2歳の時はまばらだった参拝者も、今回は行列なして順番待ち。
ゆったりはできないかなあ、と思いました。
たくさんの人が木を抱きしめていきます。

確かに触れたくなる暖かさを持った木です。
いくらでも、触らせてくれる優しい木なんですね。
なんだかちょっと切なくなりました。

でも。本当に素敵な存在の木であることに違いはありませんでした。
みんな、この木のファンなんだと思いました。

修復後などもあり、神宮の方に大事にされているのもわかります。
うろにチリひとつ、枯葉ひとつない清潔さもこの木の清浄さを高めている気がしました。
人の手がかかっているからこそです。
自然のままが良いとばかりは言えないのです。
なんでも、そうです。

またなん年後かわからないけれど、
また来させてくださいねー
その時はまた息子と娘を抱いてください。

そんな思いでその地を後にしました。


2歳の息子
9歳